【第1章】目的の明確化
この講義の目的は、「ダウ理論をマルチタイムフレームで実践的に使いこなせるようになること」です。
マルチタイムを意識しないダウ理論に意味はありません。
多くのトレーダーが陥りがちなのが、
と、単一の時間足だけを見てエントリーしてしまい、結果的に大きな流れに逆らったポジションを取ってしまうことです。
ダウ理論そのものは非常にシンプルで強力な理論ですが、それを「どの時間軸で、どのように適用するか」を理解していなければ、本当の意味での“環境認識”はできません。
この講義では、ダウ理論の基礎を押さえたうえで、
- 日足
- 4時間足
- 1時間足
- 5分足
といった複数の時間足を使って、いま自分が相場のどの位置にいるのかを正確に把握する力を身につけていきます。
たとえば、上位足が上昇トレンドを形成している中で、5分足が一時的に下降トレンドを描いていたら――
以下はGBPJPY(ポンド/円)のM5チャートですが、これを単体で見るとどうでしょうか?

誰がみても下向きに相場は動いています。
以下のチャートはGBPJPYのH4チャートです。

上向きですよね。
先ほどのM5の下降トレンドは、上位足H4の黄色の部分です。

つまり上位足上昇トレンド中の調整の下落ということになります。
もしM5の環境だけをみてトレードしていたら、上位足の波に巻き込まれて負けていたでしょう。
エントリーを見送るべき「逆張り」なのか、あるいは「上位足の押し目買いチャンス」なのか?
こういった判断が感覚ではなく、理論と根拠をもとにできるようになることが、この講義のゴールです。
そして別解説のフィボナッチリトレースメント、エリオット波動などを活用したトレードで、最高の結果を残すためにもこのマルチタイムフレームでダウ理論を理解することは必須になります。
【第2章】ダウ理論の基本
― これを知らなきゃ始まらない ―
ダウ理論は、相場のトレンドを見極めるための“軸”となる理論です。
これを理解することで、「いま相場は上昇なのか?下落なのか?その転換点はどこか?」を見極める力が養われます。
1. トレンドの定義(高値・安値の更新)
ダウ理論ではトレンドを以下のように定義します:
- 上昇トレンド(上昇ダウ)
「高値切り上げ」かつ「安値切り上げ」が続いている状態。
つまり、前回よりも高い高値(Higher High)と、前回よりも高い安値(Higher Low)を形成している状態。 - 下降トレンド(下降ダウ)
「高値切り下げ」かつ「安値切り下げ」が続いている状態。
つまり、前回よりも低い高値(Lower High)と、前回よりも低い安値(Lower Low)を形成している状態。 - レンジ(ノートレンド):
高値も安値も切り上げ・切り下げておらず、方向感のない状態。

📌 ポイント: トレンドの“定義”を明確にすることで、主観ではなく「ルール」で相場を判断できるようになります。
2. トレンドの3段階(先行期・追随期・利食い期)
ダウ理論では、トレンドの形成は以下の3つの段階を経るとされています
- 先行期(第一段階)
大口投資家や機関投資家など、相場の内部情報を持つ人たちが動き出す時期。
この時点ではまだ大衆の多くは方向感を掴めず、出来高も少なめです。 - 追随期(第二段階)
トレンドがチャート上にも明確に現れ、テクニカル的な根拠に基づいて多くの投資家が参入してくる時期。
この段階が最も値幅が取りやすく、リスクも比較的低くなります。 - 利食い期(第三段階)
ニュースや話題などで「乗り遅れた投資家」が一斉に参入し、価格が過熱する時期。
一方で、先行期に入っていた投資家はすでに利益確定(利食い)を始めており、反転の兆しが出やすくなります。

ダウ理論は理解していても、波を捉えることができていない場合、利食い期の天井付近でエントリーしてしまい、利益確定の売りに巻き込まれて負けてしまうケースは本当に多いです。
📌 ポイント:
「いまのトレンドはどの段階なのか?」を意識することで、最も安全で効率的なエントリータイミングを狙うことができます。
3. トレンド転換のサイン
トレンドが終わるサイン=転換のサインを見極めることは、損失を最小限に抑えるために重要です。
上昇トレンドが転換する場合
- 高値を更新できなくなる(ダブルトップや三尊の形)
- 押し安値を下回る(Higher Lowの崩壊)
下降トレンドが転換する場合
- 安値を更新できなくなる(ダブルボトムや逆三尊の形)
- 戻し高値を上回る(Lower Highの崩壊)
などが転換のサインです。
📌 まとめ
トレンド転換の兆しが出たときに「すぐに逆張りする」のではなく、「トレンドが変わったのか、調整なのか」を上位足で確認する習慣が大切です。
【第3章】時間足によるトレンドの違い
― なぜ複数時間軸で見る必要があるのか? ―
1. 時間足によって「トレンドの見え方」は変わる
相場は同じ動きをしていても、時間軸(タイムフレーム)を変えるだけで見え方がまったく変わります。
日足では上昇トレンドに見える相場も、5分足では下降トレンド(押し目形成中)に見えることがあります。
これは、時間足ごとに「波の大きさ」が異なるためです。
たとえば、日足の上昇トレンドの中に、4時間足の調整(下落)があり、その中に1時間足の戻り売りが発生し、5分足では細かなトレンド転換が起きています。
📌 ポイント:
1つの時間軸だけ見ていると、逆張りのエントリーをしてしまうリスクがある。だからこそ、大きな流れ(上位足)を確認した上で、タイミング(下位足)を取ることが重要になります。
2. なぜ複数時間軸で見る必要があるのか?
複数の時間足を見る理由は主に3つあります。
① 大局を見誤らないため
- 上位足(日足や4時間足)は「相場の本流」です。方向性やエネルギーの向きがここに現れるため、これを無視すると一時的な動きに翻弄されやすくなります。
② 現在地を正確に把握するため
- たとえば、「今は日足上昇トレンドの中の、4時間足の押し目形成中」といったように、今の位置が全体のどの部分かを知ることで、戦略の精度が上がります。
③ タイミングを取るため
- 実際のエントリーは5分足や1分足などの下位足で行うケースが多いですが、その際に「上位足に逆らっていないか?」を確認することで、勝率・優位性が大きく変わります。
3. 上位足と下位足の関係性(因果関係)
これを理解するには、「川の流れ」をイメージするとわかりやすいです。
- 上位足(日足や4時間足)は「本流」=大きな川の流れ
- 下位足(1時間足、15分足、5分足)は「支流」=小さな川の動き
いくら支流が逆方向に流れていても、本流の流れには逆らえません。
つまり、下位足で一時的に逆方向に動いていても、本流(上位足)の流れにいずれ引き戻されるのです。
因果関係の考え方
- 上位足が原因、下位足が結果
例:日足の押し目を形成するために、5分足では下降トレンドが発生する
→「5分足が下落してるけど、これは日足の押し目かも」と読み取れるようになる - 下位足のトレンド転換が、上位足の転換の初動になることもある
例:5分足 → 15分足 → 1時間足 とトレンドが転換していけば、やがて4時間足にも影響を与える - マルチタイムフレームでは、「上位足の流れに沿った下位足の動き」を捉えることが、最も高勝率なポイントになります。
📌 まとめ:複数時間軸での環境認識の重要性
- 相場は波でできている。大きな波(上位足)と小さな波(下位足)の関係を理解することが超重要。
- 上位足は「方向性」、下位足は「タイミング」と役割が異なる。
- 上位足で方向を決め、下位足でタイミングを取るのが、最も合理的かつ再現性の高い手法。
【第4章】マルチタイムフレーム分析とは
― 上位足 → 中位足 → 下位足で環境を読み解く ―
1. マルチタイムフレーム分析とは?
マルチタイムフレーム分析(Multi Time Frame Analysis)とは、
複数の時間足を使って相場の環境認識を行う分析手法です。
一つの時間足だけでは見えない、相場の本質的な流れやタイミングを
「上位足で流れを把握し、下位足でタイミングを計る」という形で組み立てるのが基本です。
2. 分析の順番は「上位足 → 中位足 → 下位足」
マルチタイムフレーム分析は必ず上位足から見るのが鉄則です。
例:3つの時間軸を使った分析
- 上位足(日足や4時間足):トレンドの方向や節目を確認(全体の流れ)
- 中位足(1時間足):調整や波の構造、押し目・戻り目の形成をチェック
- 下位足(5分足や15分足):エントリーのきっかけ(トリガー)を探す
この順番を逆にして、いきなり5分足を見てトレードしてしまうと、大局に逆らったポジションを取ってしまうリスクが非常に高くなります。
3. 相場は上位足に従う
「下位足は上位足の影響を強く受ける」というのは、トレードにおいて非常に重要な考え方です。
たとえば、
- 日足で上昇トレンド
→ 一時的に5分足が下落していても、それは「日足上昇の中の押し目」である可能性が高い。
→ 安易な「戻り売り」は危険。むしろ押し目買いのチャンスかもしれない。
このように、上位足を無視して下位足だけで判断すると、逆張りになってしまい、結果的に負けやすい構造になります。
4. しかし、下位足が上位足の変化を“先に”示すこともある
上位足のトレンドが変わるとき、その兆しは下位足に最初に現れます。
具体例:
- 日足で上昇トレンドが続いていたが、5分足 → 15分足 → 1時間足と、
徐々に下位足でトレンド転換(高値を超えられず、安値更新)が起こる。
このように、「下位足の連鎖的な変化」は、上位足トレンドの終了や反転を知らせるサインになります。
📌 ポイント:
- 普段は「上位足 → 下位足」の流れを重視
- 「下位足の異変」を観察することで、いち早くトレンド転換を察知できるという両面の視点が必要です。
5. 実際のトレードへの落とし込み方
① トレンドの方向性を決める(上位足)
→ 例:日足・4時間足で上昇トレンドを確認
→ サポートライン・押し目候補を探す
② 波の構造と調整をチェック(中位足)
→ 例:1時間足で押し目形成の兆しがあるか?
→ 押し安値を割らずに反発しているか?
③ エントリートリガーを探す(下位足)
→ 例:5分足で安値切り上げやトレンド転換
→ ダブルボトム、ラインブレイク、ローソク足パターンなど
このように上位足で大局を捉え、中位足で構造を確認し、下位足で入ることで、
無駄なエントリーを減らし、勝率の高いポイントだけを狙うトレードが可能になります。
📌まとめ:マルチタイムフレーム分析はトレードの羅針盤
- 相場は時間軸ごとに波の形が異なる
- 上位足で「地図」を見て、下位足で「道を歩く」ようにトレードする
- トレンドの“初動”を察知するために、下位足の変化にも敏感になる
【第5章】まとめと実践への応用
― “今どこで戦っているのか”を知ることが、勝てるトレードへの第一歩 ―
1. 環境認識ができると、「今どこで戦っているのか」が明確になる
マルチタイムフレーム分析を通じて、
「自分はいま相場のどの段階にいるのか?」を把握する力=環境認識力が身につきます。
これにより、
- 「これは本流に乗った押し目買い(順張り)だ」
- 「これは天井圏で、トレンド転換の兆しが出ている」
- 「ここはレンジ相場で、無理に手を出すべきではない」
といった判断が可能になります。
📌 結果的に… 無駄なエントリーが減り、トレードの精度が一気に上がります。
2. 感情に振り回されないトレードが可能になる
環境認識が曖昧だと、チャートの細かい動きに一喜一憂して、
- 「ちょっと動いたから焦ってエントリー…」
- 「逆行して不安になり、損切りすべきところでホールド…」
- 「高値掴みや底値売りをしてしまう」
といった感情トレードに陥りがちです。
しかし、マルチタイムフレーム分析でしっかりと根拠をもって相場を見ていれば、
- 「これは上位足の押し目の一部、むしろチャンス」
- 「下位足のノイズに過ぎない」
- 「エントリー根拠が崩れたら淡々と切る」
というように、冷静な判断と行動ができるようになります。
3. 日々のトレードにマルチタイムフレーム分析を組み込む流れ
マルチタイムフレーム分析は、慣れれば毎日のトレードに自然と組み込めるものです。
以下の流れを参考に、日々のルーティンとして活用してください。
毎日のトレード手順例
- 日足 or 4時間足をチェック(大きな流れの確認)
→ トレンド方向(上昇・下降・レンジ)
→ 高値・安値の更新状況、押し目ゾーン、フィボナッチ反発ゾーン - 1時間足で波の構造・調整の状況を確認
→ 押し安値・戻り高値は守られているか?
→ 反転の兆しがあるか? - 15分足・5分足でエントリータイミングを探る
→ ダブルボトム(トップ)、切り上げ(下げ)構造、トレンドラインブレイク
→ 出来高やプライスアクションもヒントに - 損切り・利確ポイントを設定
→ 根拠が崩れたら切る(上位足の節目 or 直近安値)
→ 利確は次の抵抗帯、フィボナッチ・エクステンションなどを目安に - トレード後に検証・振り返り
→ 「環境認識は合っていたか?」
→ 「なぜ勝てた/負けたのか?」
→ 「次に同じ場面が来たら、どうするか?」
4. これから意識してほしいこと
- 時間足ごとの役割を混同しない
→ 上位足は“方向”、下位足は“きっかけ” - 目の前のチャートだけで判断せず、必ず“引きで全体を見る”
- フィボナッチは「ゾーン」、反応を見るのは「下位足」
トレードは地図のない登山に似ています。
どこに山頂があるか分からず、足元だけ見ていても迷いやすい。
でも、マルチタイムフレーム分析を使えば、
- 地図(上位足)で方向を確認し、
- 現在地(中位足)を特定し、
- 一歩一歩の足取り(下位足)で登ることができる。
この講義を通じて、あなたの中に「環境認識」という羅針盤ができていれば幸いです。
あとは経験と検証で、どんどん精度を高めていきましょう。